あと2日後に、ぼくはもと関係会社の彼女に写真を送る約束をしたけれど、彼女は憶えてるだろうか
今月も2回、彼女から電話がかかってきた
一度めは、ぼくがまだ得意先のレセプションをしていた時で、月中(つきなか)の木曜日の夜10時。二度めはそれから数日後の、日曜日の夕方の6時過ぎ
両方とも、「旦那が帰ってこないから腹たってる」という惚気(のろけ)た文句を彼女が喋る内容で、木曜日は電車に乗ってる時も『もう降りた?』というメールが何度も来たから結局ぼくがかけ直して、零時を過ぎても30分くらい話してた
日曜は『さっき1時間半くらい二人で足裏マッサージ行ったけど、会社から電話があってまた行っちゃった。わたしお腹空いたからもうご飯食べちゃった。だから晩ごはんは作らないけどいいよね?』みたいな内容。
写真を送るタイミング、どうして月末なの?と彼女に不思議そうに訊かれた時、ぼくはつい正直に、「それ5年前の今月末の日付だから」と答えてしまってサプライズをなくしちゃったけど。
あの日あの時、僕等は何を話していたんだろう?
写真の場所は僕等が攻略に頑張った外勤先の近くにあった、きみがお気に入りだったイタリアレストラン。薄暮の店内で、きみはピースして笑ってた
ぼくは写真に「あの時きっと話してただろうこと」を書くべきかな。あれからもう5年。
あの時、紫陽花は咲いていただろうか。きみは『懐かしい』ってもう閉店したあの店を惜しんだけど、いまのきみに5年前はどれくらい遠い記憶なんだろう